若きトランペッターに幸あれ

    夜の定番ランニングコースになっている川沿いの遊歩道は信号がなくクルマ通りも気にせずに済み、とても走りやすくなっています。それに水際というのは川でも海でもなんとなくココロが落ち着くもので、1日の大半を室内で過ごすヤマダには良い気分転換になるんですね。 コースの半分をちょっと過ぎたあたりの水門でいつもトランペットを練習しているボーイがいるんです。ちょっと大人っぽい中学生かちょっと幼くみえる高校生といった感じ。吹奏楽部に入ったのか、ジャズバンドで吹くつもりなのか。ヤマダはひどい雨以外のときは最近ほぼ毎日走っていますが、彼もほぼ毎日水門のあたりで練習をしています。夜に走っているためその水門を通る時間は２０〜２２時とかなりバラつきがあるものの、彼は当然のようにそこに居て、来る日も来る日もトランペットを吹いているのです。 川沿いと言えど水門のすぐ側には民家もあり、騒音の苦情が来たりしないのだろうかと心配しながら毎晩彼の後ろを走り抜けていましたが、数日後にそんなヤマダの懸念は杞憂であったことがわかります。そう、彼のトランペットからは未だ音が出ていないのです。聴こえるのは彼が勢いよくトランペットへ吹き込む息使いの音だけ。ヤマダは経験がないのですが、吹奏楽器の習得において最初の難関は唇や舌をマウスピースと連動させて音を出すことだと聞きます。 ヤマダが水門で彼が練習するのを見かけるようになってから１ヶ月。蒸し暑さの中、酸欠の金魚のような顔をしてランニングするヤマダにもそろそろ疲労の色が滲み始めました。ヤマダの体力が尽きるのが先か、彼のトランペットから音が出るのが先か。水際のチキンレースは続きます。 ブログは毎日更新しています。 きのうのブログはこちら。

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